未来技術としてのストレッチャブルディスプレイ

 

フレキシブルディスプレイの次世代技術として、ストレッチャブル化が期待されています。例えば将来、人体・機械・乗り物・構造物・ロボットなどにディスプレイを貼り付けて使用するためには、3次元の曲げ変形を可能にしなければなりません。そのため、今後、柔軟化はもとより延伸もできるストレッチャブルディスプレイが求められます。それらは、今後のウェラブル情報端末のキーテクノロジーになる可能性もあります。また、ストレッチャブル化により、画面を引っ張って拡大して見やすくすることができるかも知れません。本研究室では、そのような夢のディスプレイの基盤技術を構築するため、先導的に研究を進めています。

 

収納性の向上と曲面表示への適用が可能

 

多様な3次元曲面に自在に変形して装着可能

 

● 高分子ジェル基板のフィージビリティ

 

現在、フレキシブルディスプレイ用の基板素材として、プラスチックフィルムの導入が進められていますが、将来は延伸する透明ゴム(エラストマー)、さらにその先には変形自在な高分子ジェルを活用できると考えています。ジェル素材は高分子で多量の液体分子を保持した構造であり、基板の概念を大きく変えます。本研究室では、透明なジェル基板を液晶ディスプレイに応用するための検討を進めています。

 

高分子ジェルの外観

 

   ストレッチャブル化に向けた液晶材料のジェル化

 

液晶層が個体となれば、基板間隔の保持が容易となります。そこで、基板の間隔保持に有利で電気光学効果を有する自己保持性液晶ジェル膜の基礎研究を進めています。この液晶ジェルは機械変形に強い、自己修復が期待できるなどの特徴を有しています。変形型ディスプレイの分野に自己修復という概念を初めて導入しました。

[立石科学技術振興財団研究助成(2016)]

[国際会議IDW Outstanding Poster Paper Award (2018)]

映像情報メディア学会映像情報メディア未来賞フロンティア賞 (2019)]

 

 

ジェル化した液晶膜の延伸試験

 

   基板レス化に向けた液晶・高分子複合膜の創出

 

ストレッチャブルに向けてプラスチック基板を無くす取り組みも進めており、その場合でも高コントラスト表示が可能なデバイス構造が求められます。そこで、自立性の液晶・高分子複合膜内において分子配向を伴う液晶の分散形態を自在に制御するため、紫外線パターン露光による液晶・高分子相分離に関する基礎研究を進めています。液晶の形態・配置・分子配向が制御された複合膜は、フレキシブルディスプレイに限らず、様々な電圧可変光学デバイス(マイクロレンズ、光導波路など)にも応用が期待されます。

科学研究助成費 挑戦的萌芽研究(2014-2015)]

電子情報通信学会英文論文誌 招待論文 (2016)]

 

ねじれ配向の液晶小滴と高分子の複合膜

(液晶・高分子とも90°ねじれ配向)