機能の本質と理解

100字で迫る専門用語の基本概念〜

 

専門用語を使えば、研究分野の共通認識(土台)から出発できるため、高度な内容を短時間に議論する上で便利です。本研究室で扱う分野では、様々な専門用語を用いますが、その機能・役割の本質を砕いて説明できれば、様々な分野への示唆になります。また、理解が本質的であるほど、異なる分野で根っこが繋がる可能性があり、さらに理解が深まります。

本研究室における研究の視野(スコープ)は、材料から感性まで広範囲な分野に及び、「基礎物理→材料物性→応用デバイス→情報サービス→感性→思考」というように階層的に体系化できます。これにより統一理念を掲げて、一気通貫に個々の技術を積み上げることができ、基礎から応用まで一貫した研究遂行が可能となります。

また、各レイヤーの機能を的確に理解することで、平行技術や直交技術(クロスフィールド)の存在を認識できるため、技術・知識の穴埋め・組み合あせ・融合による新領域の開拓や研究の新展開にも役立ちます。専門用語を本質的な機能を基に、誤解を恐れず短文でイメージすれば、以下のように表せます。基本概念を理解する上では、研究者の見識が直接的に問われます。

 

研究進展の分野整理 〜入口から出口までの階層化〜

 

基礎物理

電界と磁界が相互に生まれて伝搬する電磁波で、波長の大きさにより可視・赤外・紫外などに分類される。高い周波数の振動のため、物質を構成する原子・分子内の電子と相互作用が強く、様々な光学現象を誘起する。

化学反応

原子核に引き付けられた電子の物質波は干渉で定在波の軌道を生じ、電子はエネルギーが最も低い軌道に収まる。複数原子の場合、最外殻電子の共有などで電子が詰まった安定な閉殻状態となるように化学結合が生じる。

分子結合

共有結合、イオン結合、水素結合などの原子の結合では、結合に直接寄与する官能基の有無だけでなく、分子の密度や運動に基づく衝突・乖離の割合・確率にも依存する。

分散力(ロンドン力)

2つの分子に永久双極子があれば強いクーロン力が働くが、双極子のない分子間にも弱い引力が生じる。時間的に揺らぐ電子分布の間には過渡的に力が働くためである。この引力により極性の少ない有機分子が凝集する。

電子挙動

物質内の電子挙動は、原子・分子内の電子軌道とその占有状態で決定される。化学結合を決定する電子軌道をあらかじめ計算できれば、化学物性はもとより、光物性、電子物性、熱物性、機械物性などが定まる。

 

中央棟付近芝生

工学研究科中央棟の芝生(青葉山キャンパス)

 

光機能性

黒体放射

温度(熱振動)を有する物質内では、原子・分子内の電子が振動するため、温度に応じたスペクトルの電磁波を放出する。温度が高いほど、振動周波数分布が高くなるため、放出される光のピーク波長は短くなる。

光励起

入射光の高周波電場で、分子内に定在波が励振されて軌道を形成する。光の周波数が高いほど定在波の節が多く、軌道のエネルギーも高くなる。分子内最外核の電子の定在波(軌道)は、様々な光物性を発現する源となる。

光吸収と発光

分子内の電子には、分子構造で規制された定在波として複数の軌道が存在する。光を吸収して励起された電子は高エネルギーの定在波に移るが、励起された電子は光放出でエネルギーを失って低エネルギーに戻る。

双極子放射

光などの電磁波が誘電体に入射した場合、分子の電子軌道などに基づく分極が呼応して振動し、それにより同一周波数の電磁波が放射される。これにより、光の透過、反射、屈折、散乱、回折などの現象が説明される。

誘電分極

極性を伴う分子では、静電界、交流電界、電波、光など、電荷分布が外部電場で偏る。この分極は電子軌道、分子構造・配列の変化により発現して、その大きさは静電界/光に対してそれぞれ誘電率/屈折率で表される。

屈折率

光周波数に対する分極の大きさを意味する。入射光の電界で双極子放射が生じ、伝搬光は入射光と放射光の合成電界として表される。分極が大きいほど周辺領域の再放射も加わるため伝搬が遅れて、見かけ上、波長が縮む。

誘電緩和

分極を誘起する電圧を解消すると分子構造に依存した緩和が生じる。緩和時間と交流電界の周期が共鳴すれば分極が増して、誘電率/屈折率の周波数依存性が生じる。共鳴状態ではエネルギー授受が起こりやすい。

物質内の光制御

物質内を伝搬する光の電界は、入射光と再放射光の和となる。そのため、物質の分極現象に基づく屈折率(誘電率)・吸収率などを制御することにより、光の振幅・位相を自在に制御できる。

 

セイタカアワダチソウ

セイタカアワダチソウ(青葉山キャンパス)

 

微小光学

光子・フォトン

電荷の加速度運動で発生する光(電磁波)が物質内に入射すると、原子核に引きつけられて局在化した電子が、光の電場に応じて加速されて分極を生じる。その電子波は、固有周波数を有する定在波の軌道を形成する。

光放出・伝搬

電子などの電荷の加速度運動により電界・磁界が変化して、その振動が空間を電磁波(すなわち光)として伝わる。波源の形状や距離により球面波や平面波になり位相干渉が生じる。境界条件により固有の定在波も生じる。

エバネッセント光

伝搬・放射せず局在化する光。全反射、カットオフ波長などで光が伝搬・浸透しない場合、入射部分に局在化する。波長程度の微小構造制御による光のフィルタリングや、光の局在化を利用した微小構造観察に有用である。

表面プラズモン

自由電子を持つ物体に光が入射すると、電子集団が光電場に応じて振動して伝わる。それにより光沢や発色が生じる。物体サイズが小さいと、境界条件により定在波となり、プラズモン共鳴として反射波長が選択される。

電子波の共鳴

分子構造に封じられた電子は周波数に応じた定在波を作り、それらは弾性を有する調和振動子と解釈できる。光電場と電子挙動の振動子を共振させることで、効率的にエネルギーの授受すなわち蓄積・放出が可能となる。

可視光

太陽光のうち波長が比較的短い電磁波で、人の視細胞で捉えられる波長域のため重要である。物質との相互作用が強いだけでなく、複雑な視覚特性に関わる。一般に半導体の励起・発光として、電子工学でも多用される。

量子サイズ効果

隣接した分子は外殻電子軌道が重なり、新たな電子波の定在波(電子軌道)を形成し、軌道サイズと振動数は凝集数で定まる。この軌道による発光・吸収波長(振動数)は、分子内遷移だけでなく、凝集数に依存する。

 

コオロギ

エンマコオロギ(青葉山キャンパス)

晩夏の訪問客

 

有機材料

π電子共役系

4価の炭素が3配位結合で連なると、原子間結合に寄与しない電子が共有化・局在化されたπ軌道を作る。これにより分子構造は剛直となる。分子内電子軌道の変化・遷移により特定波長の光吸収や発光が生じる。

ソフトマター(有機材料)

炭素骨格を主とする化合物の総称で、分子構造の可動性や弱い分子間相互作用により柔軟性を伴う。無機物では結晶構造を基本として機能が発現するが、有機では組み込む原子や分子構造がマクロな物性や機能を支配する。

色素・顔料

大きなπ電子共役軌道は、個々のπ電子軌道の線形和で表現され、様々な定在波のうち低エネルギー状態をとる。軌道間遷移で可視波長に対して吸収・発光を示して特有の色を持つ。分子形状で光吸収に異方性も生じる。

重合・架橋

低分子化合物の結合が、官能基の連鎖的生成により進む反応。重合が進むと、運動性が減少して官能基が会合しなくなるため、実質的が止まる。架橋は高分子間を繋ぐ結合で、分子運動を抑制するため硬化を促進する。

高分子

長いもしくは大きな分子鎖を有して運動が比較的小さいため、柔軟性とともに機械的安定性が得られる。その物性は分子鎖の凝集状態にも依存する。様々な分子を組み込めるため、機能の複合化や相乗効果が期待できる。

ジェル

3次元ネットワーク状分子が液体分子を多量に包含する。分子鎖が凝集した高分子に比べて、機械変形できる度合いが大きく液体の機能性も付加できる。分子間力で結合したネットワークでは自己修復能力も得られる。

液晶

剛直で幾何学的形状の低分子は、揺らぎながら分子間力で自発的に配列する。分子構造と配列によりマクロな物性に異方性を示し、ディスプレイでは電気的・光学的異方性に基づき、光学特性の電圧制御機能が得られる。

ダイレクタ

液晶は分子間力で凝集するため、配向変化は弾性に従う。微小領域の配向を同一のダイレクタと考えて、それらのドメインの集合体として扱えば理論的扱いが容易になる。実際にダイレクタの熱振動も観察される。

光学異方性

有機・無機に限らず、分子の形状・配列に基づき分極に偏りがあると、入射光の電場方向に応じて、異なった光物性(屈折率、吸収率、散乱係数)が発現する。そのような材料は、電子物性や機械物性にも異方性を生じる。

オーダーパラメータ

液晶などの分子凝集体は流動性と配向性を併せ持つため、熱ゆらぎに依存する分子配向の度合いを熱統計力学で表せる。熱運動の元となる温度はもとより、分子間力を左右する分子形状・柔軟性・極性有無などに依存する。

有機半導体

個々の電子軌道が重なるように分子を設計すれば電子が動けるため、有機物を絶縁体から半導体に変えられる。既存の無機半導体に比べて分子結合が弱いため、フレキシブルな電子回路を低温の印刷工程で作製できる。

電荷挙動

有機材料の電荷輸送と光吸収・発光は、基本的に分子内の電子軌道の遷移で決定される。しかし結晶、非晶質、界面など凝集構造に応じて、隣接分子の影響を受けて光物性が変化する。

 

ヨメナ

ヨメナ(青葉山キャンパス)

 

光デバイス

半導体

光・熱・電界・注入電荷などの外部刺激により、電子や正孔(電子軌道の穴)が励起され、電気特性が制御される。生じた電荷は、原子間でエネルギー差が生じない構造のため、その移動を電界により容易に制御できる。

電荷の励起と再結合

低くて安定した軌道内の電子が、光の電界などで加速することで高い軌道に遷移して、エネルギーを蓄える。一方、電子と正孔の再結合では低い準位に移るため、落差分だけ電子が加速され、電磁波としてエネルギーを放出する。

熱拡散

電荷移動は電界でも制御されるが、デバイス設計では熱拡散の効果も欠かせない。電荷の濃度差がある場合、熱拡散の効果は顕在化する。電子軌道に電位差があってもそれが小さければ、電荷は熱拡散より移動する。

フォトダイオード

電荷の濃度や移動に極性依存性のある半導体を接合し、バイアス電圧を印加して移動電荷のない空乏層を形成する。そこに光を入射すると電子と正孔が励起され、光強度に応じた電気信号が高感度・低雑音で得られる。

発光ダイオード(LED

極性依存性のある半導体接合部に、電流が流れるようにバイアス電圧を印加すると、両電極から注入された極性の異なる電荷が接合部で再結合する。この時、電荷軌道のエネルギー変化に応じた波長の光が外部に放出される。

レーザーダイオード(LD)、半導体レーザー

半透過性の光共振器内に発光ダイオードを置くと、発光光のうち特定の波長・位相・偏光が干渉して定在波を生じる。光定在波の電界に合わせて電荷が駆動され再結合し、この誘導放出で光は同一波長・位相・偏光となる。

光変調器

LEDやレーザーダイオードなどの光源を、電気信号で直接変調する内部変調と、外付けの光変調器を用いる外部変調がある。光の強度、位相、偏光、波長などに、電気的な情報を重畳する役割を担う。

 

カリンの実

カリン(青葉山キャンパス)

 

電気回路

電気回路

抵抗、コンデンサ、コイルなどの線形受動素子を組み合わせて配線し、オームの法則に基づき電荷の移動挙動(電流の流れ方、電圧のかかり方)を変えることで、情報の取得、加工、分配、制御など役立つ機能が得られる。

抵抗

電圧印加時に物質内の構成原子は電荷に衝突して移動を妨げる。電界で加速した電荷のエネルギーは、構成原子の振動(熱)に変換されて失われる。抵抗値は電流の流れにくさを表す。抵抗が大きければ加熱素子となる。

コンデンサ(キャパシタ)

電荷を留め置く能力。電極板を対向させた構造が一般的。直流電圧の印加直後には電流が急激に流れるが、すぐに飽和する。交流印加時には電圧と周波数に応じた交流電流が流れる。電気エネルギーの貯蔵にも有用。

コイル(インダクタ)

巻線構造が一般的、電流による磁界発生、磁界変化に伴う起電力という現象から、電流・磁界に強い相互作用がある。その結果、電流・磁界の変化を抑制しようと働く。印加電圧の周波数が高くなると電流が流れなくなる。

電子回路

トランジスタやダイオードなど非線形能動素子を回路に組み込むことで信号増幅や演算も可能となる。同一基板上に多数の素子を一度に作り込むことで、ICやLSIなどの集積回路が実現でき、高度な処理が可能になる。

バイポーラトランジスタ

電荷挙動に極性依存性のある半導体を交互に接合した3層構造とすれば、両端の電流が抑制される。この時、中間層への印加する電圧を制御すれば、両端に流れる大きな電流を変調できる。増幅、スイッチングなどに有用。

電界効果トランジスタ

絶縁体に介して半導体に電界を印加すると、熱活性で励起した電荷が電界で引き寄せられて再結合しないで存在する。このチャネルに流れる電流は、外部電圧の大きさで制御できる。入力抵抗が大きいのが特徴である。

 

ジョロウグモ

ジョロウグモ(青葉山キャンパス)

 

画像電子工学

画像工学

物体からの光強度・波長・時間変化・空間座標に対する人間の視覚特性に基づき、撮像・処理・伝送・表示が行われる。画像情報の入出力・伝送・蓄積により、人の認識力やコミュニケーション力を高める。

撮像(イメージング)

3次元の光画像情報を1次元の電気信号に変換する。電子化された情報は、伝送・蓄積・圧縮などの処理が可能となる。解像度はもとより感度、ダイナミックレンジ、フレーム周波数などが主要な特性となる。

撮像素子・イメージセンサー

被写体の3次元光画像から、2次元光画像、2次元電子画像、1次元電気信号に変換する。入射光はマトリクス配置の光電変換用フォトダイオードで電荷量に変換されて、CCDCMOSの転送回路により1次元信号となる。

ダイナミックレンジ

撮像において光強度を電気信号に線形(もしくは適切な電気信号)に変換できる入射光強度の範囲。フォトダイオードや転送回路により制限される。ディスプレイと整合させないと、白飛び・黒潰れが生じて正確に階調が表現できない。

電子ディスプレイ

電子情報をマトリクス状画素で光画像として提示する。時間・空間の視覚限界を越えないように設計される。画角、アスペクト比、輝度、コントラスト比、空間解像度(ピッチ)、時間解像度(応答)が表示特性となる。

液晶ディスプレイ

偏光板で挟まれた液晶層の配向変化に基づき、バックライト光を画素単位で透過・遮断して画像を表示する。非発光方式でコントラスト比や視野角を改善するため、位相差フィルム、拡散板などの光学部材が多用される。

立体ディスプレイ

両眼視差方式と光像再生方式に大別できる。現在の立体方式は前者で、両眼に異なる情報を送るため様々な方法があるが、目の輻輳と焦点調節の不整合で疲労が生じる。後者は集光や干渉により3次元の光像を再現する。

電子ホログラフィ

光の波面を制御して干渉で空間像を表示する。あらゆる方向の光情報を反映した理想的な立体表示を実現できる。大きな回折角より視域角を確保するため、膨大な情報処理と超高解像度の液晶素子が必要となる。

フレキシブルディスプレイ

液晶・有機ELなどの電子ディスプレイの柔軟化では、ガラスをプラスチックなどの柔軟基板に置き換える。携帯・設置・意匠の自由度が拡がり、貼り付け・巻き取り・折り畳みなどこれまでにない視聴スタイルが創出される。

 

八重カンコウバイ

ヤエカンコウバイ(青葉山キャンパス)

 

画像情報

画質

電子情報を通して再現された画像や人工的に生成された画像を、実物にいかに近づけられるかが課題となる。感性の個人差にも関わるが、実用上の観点から視覚限界に基づき、画像情報の低減も配慮される。

画質評価

視覚限界に基づく空間解像度、時間解像度(毎秒フレーム数)、色空間再現範囲(色域)、コントラスト比・階調性などがある。それらの程度が高いと実物感・臨場感を覚える。階調低下として白飛び・黒潰れがある。

空間解像度

空間解像度(2点を識別できる最小距離)は画素ピッチとなる。視距離を設定した上で知覚できる解像角(標準視力1.0で角度1分)で決まる。網膜の光受容細胞の密度差により中心視野は周辺に比べて細部を見やすい。

時間解像度

明滅を識別できる最小時間間隔で、通常数十Hzである。それ以上の周波数であれば、静止画の高速切替表示でも、ちらつきが見えない。桿体細胞が中心となる周辺視野の時間解像度は、錐体が中心となる中止視野に比べて高い。

網膜内の錐体細胞で検知された3原色の強度バランスを色として認識する。色は脳内で想起される意識であり、厳密な意味での物理量でない。個人差があるだけでなく、その時の外部環境により認識される色が変化する。

色再現範囲(色域)

色覚範囲を3原色光源の混色で表現する場合、光源が単一波長の純色であれば色域が拡がり、忠実な色再現が可能となる。表色系の色域は3原色の光源・フィルターの狭帯域化によりsRGBNTSCAdobeRGBBT-2020と拡大中である。

色温度

物質が放出する光スペクトルは、黒体放射温度で決定されて、1次元量の色温度で示される。ディスプレイの自然な白色として太陽光5500 Kや、照明用に白熱灯3000Kなどが使用される。暖かい/冷たいなど視覚的感性にも直結する。

画角

通常、大きなサイズが好まれ、臨場感を大きく左右する。外界情報を得る窓であり、視野とも言える。野生において視野の確保は、食物や捕食者の早期発見に必須なため、祖先が獲得した遺伝的性質の可能性がある。

 

マツヨイグサ

ヨイマチグサ(青葉山キャンパス)

 

映像・音声コンテンツ

動画(映像)

不連続な静止画を高速に切り替えて提示すると、視覚の残像現象や仮現運動により、不連続な動きやちらつきのない滑らかな動画に見える。仮現運動は静止画間の中間の画像を、脳が無意識に補完して作り出す効果である。

フレームレート

視覚効果に基づき、動画を滑らかに表示するための周波数。高速化が望ましいが、情報量が増大する問題が生じる。視覚の時間分解能の限界を活用して、映画で24コマ、アニメで8〜24枚、テレビで30(もしくは60)フレームである。

色温度管理

照明・カメラの3原色バランスを白色光源の色温度でも表せる。この色温度を高めていくと朝・昼・夕など時間認識や、冷たいから暖かいまで心情的印象も与えうる。その管理は撮影のみならず日常の照明器具でも行われる。

映像演出

コンテンツ制作者は、空間的・時間的・人間的な繋がりを考慮しながら、被写体のライティング、カメラワーク、映像編集、特殊効果などを駆使し、意図や感性を受け手に伝える。注意を引くため意外性も活用する。

カメラワーク

カメラポジション、アングル、ズーム、フォーカス、色温度などを駆使し、空間時間の説明、注意誘導、心情表現などを意図的に行う。視覚の恒常性に基づき滑らかな動きが望まれるが、違和感を故意に演出で場合もある。

タイト/ルーズショット

人物撮影ではカメラが寄ってフレームぎりぎりのサイズにするか、引いて背景も含めるかで印象が異なる。前者では人物への注視を強制する。後者では位置関係・周辺環境が把握できるため、無意識に安定感・安心感を与える。

ごし/なめショット

構図(フレーム)による演出。例えば、背後から肩の一部を入れてもう1人の人物を撮影すると、映像を見る人は2人の会話を想起する。見慣れたシーンでは一部が欠けていても、見る側が無意識に補完する効果が生じる。

三点照明

人物撮影で斜めから輝度・明部を確保するキーライト、正面反対側から照射して影を和らげるフィルライト、後方から輪郭や立体感を強めるバックライトかならなる。顔の陰影が大きい照明演出では、きつい表情に見える。

カット編集

映画やテレビ番組など映像コンテンツの制作で用いらえる代表的なポストプロダクション作業。伝える内容や意思を分かりやすく示すため、時間経過、空間的位置、関連性を考慮し、映像素材や電子合成映像を繋ぐ技法。

カットバック

視覚の拡張というテレビ・映画の機能に基づき、空間的(もしくは時間的)に異なる映像を交互に挿入する演出方法。複雑なストーリーを理解しやするとともに、俯瞰や意外性によりコンテンツの印象を強める効果がある。

エコー飛ばし

音声演出の1つで、音楽や効果音の最終音に、電子的な残響(リバーブ)効果を大きく施すと、不自然な余韻で聞き手の印象が強まる。人は日常経験に基づき、残響の大きさにより空間の大きさを無意識に把握している。

 

ヤマハゼ

ヤマハゼ(青葉山キャンパス)

 

情報サービス

情報メディア

情報そのものでなく、情報の取得・記録・伝達・提示などを担う媒体の総称。近年、エレクロニクスを活用したメディア技術が発展し、データ量の大きな映像・静止画・音声などの情報コンテンツに応じて進化している。

ヒューマンインタフェース

人間と社会環境(コンピュータ・機械・構造物など)の間で、情報を介在させるための仕組み。人間側の五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)を通して円滑な情報授受を目指す。特に視覚、聴覚が活用されること多い。

臨場感

その場にいる感覚で主に視覚・聴覚が関わる。高臨場感を得るには、立体表示以外にも、大きな画角(視野)、高い解像度が有効である。双方向的な応答性も有用である。音の定位には3次元音場再生技術が利用される。

実物感

解像度・階調数を増やして質感を増せば、実際の被写体と表示画像の見分けが付かず、視覚が騙されることになる。超画像を好む感覚は、現実の情報を多く取得・把握しようとする人の感性・本能に沿ったものと言える。

テレビ放送

大容量の情報メディアで、目や耳の機能を拡張する役割を担う。空間・時間を超えて映像・音声を広範囲に届ける。撮像・記録・伝送・表示技術で構成されて、感動を共有できるよう高臨場感・実時間性が重視される。

マルチモーダル

五感の中で情報量が多い視覚・聴覚が電子メディアとして使用されてきたが、それ以外の触覚、嗅覚、味覚の活用も期待される。五感連携の認知機構(パターン認識)を解明・応用すれば効率的な情報授受が可能になる。

クロスモーダル

五感の統合認識により意味が構成されるため、五感の知覚間に相互作用が生じる。例えば、個々の知覚が、これまでの記憶に基づき、他の知覚に影響することが少なくない。それを用いると、知覚の補間も可能になる。

 

クサキリ小

クサキリ(青葉山キャンパス)

 

人間の知覚

五感

外部環境から受け取る情報の窓。視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚で、それぞれ可視光、気体の振動、機械的圧力、揮発性化学物質、水溶性化学物質を物理媒体とする。人は五感から得た情報を基に、判断して行動する。

視覚

五感のうち視覚情報は8割以上を占めるとされる。網膜に映った画像は脳内で高次の概念へと階層化されて、意味も含めて認知・記憶される。情報授受を効率的に行えるが、感情・生理とも直結して疲労や酔いも生じる。

光受容細胞

網膜内には可視光を検知する高感度の桿体細胞、3原色光に感応する錐体細胞があり、視感度が決定される。光が入射すると含有色素の固有波長を吸収し、色素構造が異性化して細胞内の電位変化を視神経に伝える。

色覚

網膜の中心部に集中する錐体細胞は、3原色光で分子構造が異性化する色素タンパクを含み、視神経から届くそれらの信号バランスに応じて、脳内で色として認識する。3原色刺激の強度バランスであらゆる色が知覚される。

神経細胞

神経細胞は膜電位が変化してバルス信号を他の細胞に伝え、脳内では多入力の重み付き加算、しきい処理、多出力を基本とする。膨大な数の結合とその強弱・重みに基づき、神経ネットワークの電気回路が形成される。

空間認識

人は視覚や聴覚の経験に基づき、視空間や聴空間を無意識の記憶として脳内に形成している。それらを実空間に投影もしくは照合して空間認識を行っているため、外部の環境刺激に対して的確な行動を行うことができる。

立体視

3次元空間の奥行き情報を認識する機構。脳の中で両眼視差、運動視差、2眼の輻輳角、焦点調節などで3次元モデルを再構築する。2次元画像の遠近法、陰影、重なりなどで知覚でき、脳内の処理が大きな比重を占める。

認識

五感の刺激を、圧縮・蓄積した膨大な空間的・時間的記憶パターンと照合して、意味が理解される。高速なパターン認識に基づき瞬時の注意喚起も可能。刺激の意味は大脳皮質で統合的に理解され、概念として記憶される。

感性

普段の生活で慣れ親しんだ情報が脳に記憶されているため、五感の外部刺激に対する感性も記憶に大きく左右される。例えば映像メディアにおいても、現実世界に近く違和感のない高画質や高音質を好む傾向がある。

錯覚

記憶とのパターンマッチングによる無意識の補完作業が現実のものと異なれば、錯覚となる。視覚では錯視、聴覚では幻聴、触覚では幻肢などと呼ばれる。特に視覚の情報処理は複雑なため、多様な錯視現象が知られる。

パレイドリア効果

無意味な形状の画像が、普段、見慣れているものに見えてしまう錯覚。例えば、3点あれば顔に見える。人に大切な情報である捕食動物や人の存在を即座に把握するため、進化した機能と考えられる。

共感覚(クロスモーダル)

認識では、記憶と実際の感覚の照合から、最終的に概念(意味)が無意識に導かれる。逆に概念を構成するのに足りない感覚がある場合、脳内で補う。そのため、ある感覚に対して、他の感覚も同時に覚えることがある。

 

 

コシジタネツケバナ(青葉山キャンパス)

 

大脳の高次機能

心理

人の心は、感情、意識、思考、意志などに分類される。脳内の膨大な神経細胞とそれらの回路網が生み出す高次機能で、実時間の脳計測技術による解明も進んでいる。人工知能との類似性が注目される。

脳活動

刺激の種類・強度・頻度により神経ネットワーク内の経路や興奮部位が変化して、知覚、認識、記憶、判断など脳活動が行われる。経路による信号処理は階層化され、高次の処理が進む。学習は重みの定着・強化と解釈される。

記憶

実際に生じたもしくは思考した事象をモデル化・抽象化して、情報を圧縮した概念や特徴として蓄える。記憶の可否は、刺激の強さや繰り返し数に依存する。脳内で特定の神経回路ルートが強化される現象と考えられている。

注意

五感で外部情報を取得する際、特定の情報を意識的・無意識に選択する。注意は記憶された情報や意識に基づき誘発される。視覚・聴覚で顕著に現れる。注意行動は記憶に繋がりやすく、同時に蓄積情報も更新されていく。

意識

外部刺激が記憶パターンと照合できない時に主に働く。反射や本能で即応するのではなく、膨大な記憶を駆使しながら、自身や周辺環境を客観的に分析して、有利な対処法を時間をかけて見いだす。進化の過程で獲得した能力。

無意識化

注意の必要のない繰り返し刺激は認識されないがことが多い。感性の恒常性・慣れとも呼べる。視覚で言えば、人は意識したものしか見ていない。例えば、毎日の通勤風景は網膜に映るがほとんど記憶されていない。

快・不快

直面する環境が自分や記憶にとって適・不適かを無意識に察知する。視聴覚的な好みは本能的・後天的双方で決定付けられる。脳幹神経系も関与し、感動・美意識・幸福感・意欲あるいは違和感・嫌悪感を左右する。

好奇心

新しい知識を求めることが、人類の生き残りに有利であったため、進化の過程で獲得してきた能力。新知識を得ることに快感を覚えるのは、欲求欲に基づき脳内報酬系の仕組みが機能することに起因する。

報酬系

人を含め動物の欲求は、種や個体の保存すなわち遺伝情報の保存に有利な行動を促す。欲求が満たされた時、特有の神経伝達物質の放出により喜びや快感を覚える仕組みが脳内に備わっている。進化の過程で獲得した。

認知バイアス

知覚した外部刺激が記憶に近い場合、パターンマッチングに基づき、認識自体が記憶に近い方に偏ってしまう心理現象。日常生活でも、過去の記憶との類似性から、単純な判断を無意識に行ってしまうことが多い。

確証バイアス

認知バイアスの一種で、自分の先入観や考えに肯定的な意見・事実だけを好む傾向がある。その結果、肯定的な証拠ばかり取り上げて、反証を軽視する傾向がある。思い込みが強い状態がそれに相当する。

想像・創作

膨大な記憶を多様に組み合わせ、未知なるものや起こっていないことを時空を超えて補間(内挿・外挿・透視)できる。特徴や類似性を活用したパターンマッチングに基づく。人類の生き残りと発展の原動力となってきた。

 

ヒマラヤ杉

ヒマラヤスギ(青葉山キャンパス)

高みを目指してまっすぐに成長

 

人工知能(AI

深層学習(機械学習)

認識機構を模擬する神経回路モデルとして提案され、統計的な特徴・類似性に基づき処理される。神経網を模した多層化結合回路に入力信号を通すと、各結合の重みが自発的に変化して回路網が自発的に再構成される。

畳み込みニューラルネットワーク

画像認識では位置ずれで認識精度が低下する。そこで、フィルター処理(畳み込み演算)による特徴強調と、画像縮小による圧縮を繰り返すことで、画像の特徴抽出を可能とする。これにより、画像の認識分類が可能となる。