研究の目的と将来ビジョン
これまで電子技術を用いた情報サービスは、ラジオ、映画、テレビ、パッケージメディア、インターネットというように高品質で大容量の情報を身近に扱えるものに変遷してきました。その一方で、情報のディジタル化に伴うコンピュータネットワークの発達により、通信・放送・印刷など様々な情報メディアの融合が進んでおり、現在、大きな変革期を迎えています。 今日の情報化社会における情報提供環境は、言うまでもなく電子技術(エレクトロニクス)をベースに構築されています。その中でも、ディスプレイ技術が情報のヒューマンインタフェースとして大きな役割を果たしました。液晶などのフラットパネルディスプレイの技術革新が、人々のライフスタイルを変革する携帯情報端末や大型薄型テレビを出現させたといっても過言ではありません。
● フレキシブルエレクトロニクスのインパクト 今後、人と人が、さらに人と社会がより高度に繋がる情報インフラの実現に向けて、人の感性に迫るヒューマンインタフェースが求められており、先進的なディスプレイ技術が新たな情報サービスを先導していく可能性があります。人とディスプレイの整合性を考えると、平板というハードウェア形態が見直される時期かも知れません。これまで生活環境の構造物は、軽くて丈夫で安価な有機材料すなわちソフトマター(プラスチック、ゴムなど)に置き換わってきており、昨今、電子技術分野にも応用が進展しています。有機材料を用いてディスプレイ形態の自由度を拡大できれば、これまでにない様々な可能性が見いだされることになります。 例えば、広く普及した液晶ディスプレイのガラス基板をプラスチック基板で置き換えられれば、薄い・軽い・割れないなどの特徴により、タブレット情報端末の小型・中型ディスプレイはもとより、
据え置き型の大画面ディスプレイまでも大きく変貌します。さらに、プラスチック基板を薄くして柔軟性も獲得した液晶ディスプレイは、あらゆる生活環境での情報提示を可能にするため、映像を伴う情報ネットワークサービスの進展に伴って、
エレクトロニクス産業全体を牽引するドライビングフォースになります。
情報化社会のライフスタイルを変革するフレキシブル液晶 ● フレキシブルエレクトロニクスの課題 フレキシブルエレクトロニクスへの期待は高まっていますが、プラスチック基板など柔らかくて機械的に不安定な部材を用いて、信頼性に優れた高画質ディスプレイを作製するには困難が伴います。次世代ディスプレイとしてフレキシブルディスプレイへの期待は高まる一方ですが、その実現を担保する材料・デバイス・作製技術はまだ確立されておらず、発展途上と言えます。期待と現状の乖離が否めません。 そこで本研究室では、液晶・高分子・有機半導体をはじめ柔らかい有機材料とその分子配列制御により、フレキシブルディスプレイなどの新しいエレクトロニクスを構築して、ヒューマンインタフェースや情報メディアを創出することを目指します。その中で、柔らかい電子デバイスの出現が、今後の情報化社会で果たす役割をしっかりと考えていきます。まずは、誰もが豊かな情報が享受できるように、大画面・高画質の映像表示を可能とするフレキシブル液晶ディスプレイの基盤技術を提案していきたいと考えています。
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