学術論文の意義

 

研究活動では、新たな学術的知識を獲得するだけに止まらず、得られた知恵を実社会で活用して享受していく必要があります。そして最終的には、人類共有の財産として蓄積・継承していかなければなりません。言わば、知識・知恵のシェアです。

本研究室では、最先端の研究を遂行するため、専門家が集う学術コミュニティである学会で、研究成果を積極的に発信して議論を行っています。研究成果を論文として発表することは、外部から客観的評価を受けることにほかなりません。これにより、新たに獲得した知識を普遍化して、これまで先人達が蓄積してきた膨大な知識体系の中に組み入れます。この体系化により、新たな知恵を人間社会に生かしていく一連のプロセス(蓄積・継承・活用)が完結します。

 

新しい知識の体系化による科学技術の進歩

 

研究成果の発表は、集会・会議と刊行物での発表に分類でき、通常、前者の予稿はその会議だけのテンポラリなもので、開催後に誰もが入手できる訳ではありません。それに対して、後者の場合、図書館、大学、研究機関および学会・出版社Webなどを通じて世界中で閲覧できます。そのような理由から、学術研究では刊行物に掲載される原著論文が最も重要視されます。最近、論文の提供・入手が容易なことから、Web掲載を通して原著論文を発表するケースも増えています。

原著論文では、関連分野の先行研究を引用して土台にしながら、新たに得られた知見を積み上げ部(オリジナリティ)として主張します。さらに、自分や他の研究者がその後に研究を継続・発展しやすいように、残された課題にも言及します。このように、個々の論文の守備範囲(他の論文との関係性)を明確にすることで、過去や未来の論文との接続が可能となり、将来にわたる知識体系の積み上げが可能となります。

 

ニッチェ

未来科学技術共同研究センター(青葉山キャンパス)

 

厳しい研究の後、論文執筆で春が到来

 

 

原著論文は、研究者が全身全霊を込めて構築した新規性・有効性を高純度化して結晶化させたものです。それらを積み上げることこそが、科学技術の発展に繋がります。原著論文の役割は、科学技術における高みの達成や分野の拡張に貢献することにあります。例えれば、優れた論文は高さや幅を大きく稼ぐ積み石のようなものです。堅い積み石(新規性・有効性が高い論文)が相互に密着した(論理性に優れた)石垣を構築できれば、高くて堅固な城郭ができるのと同じ理屈です。その場合、基礎にあたる論文の積み上げが十分であれば、当該分野において高い到達点やパフォーマンスを望めます。

さらに、1分野の公表論文は、多くの隣接分野とも情報が共有されて、自発的に相互作用を及ぼし合います。これにより、1編の論文が科学技術の幅広い発展の契機になることもあります。

 

ツユクサ

ツユクサ(青葉山キャンパス)

論文の瑞々しさを保つため、発表のタイミングも重要