大学研究の位置付け

   

一般に工学分野の研究は、公的研究機関、大学の研究室、企業の中央研究所などで行われます。その中でも大学研究は、専門的な見識を有する研究者(教員)が、自由な発想に基づいて行います。そのため、短期間での目標設定と成果が迫られる企業研究とは対照的に、長期スパンの基礎的な取り組みが可能です。企業ではできない研究分野の基盤作りもできます。工学系の研究テーマは、将来の社会をイメージして、数年先から数十年先、時には100年先の要請に応えようとする試みも少なくなく、ターゲットのキーワードは「ロングレンジ」と言えます。

 

 

工学分野における研究機関の役割分担モデルの例

(社会コンセプトと基盤技術の提案から製品・サービスの実用化まで)

 

昨今、世界的な風潮として、大学が社会を変えるイノベーションの発信拠点になることが期待されています。克服が困難な社会問題に対しても、抜本的で斬新な科学技術政策を先導・提言する機能が求められています。大学におけるそれらの能力は、学術研究の自由とそれを支える運営の自主自立により担保されます。今後、情報ネットワーク社会の進展が加速して予測が困難になる中で、高度な専門的見識をベースに、先の先を見越して新しい社会システムを提案・創出する大学研究の役割は、ますます重要になります。そのため大学研究の課題は、研究者の発想・判断に基づきユニークであることが好ましく、世界レベルでオンリーワンを目指すのが基本です。その一方で実用化すなわち社会還元には、企業など他機関との連携が少なからず必要となることは言うまでもありません。

 

山桜アップ

カンコウバイ(電子情報システム・応物系1号館)

研究でも、たくさんの花が咲きます

 

大学の研究活動では、人知の地平線や限界を目指して、究極や根源を追い求める必要があります。その課題は新たな挑戦や冒険でなければなりません。それが喫緊の重要課題であれば、時間軸の設定も必要です。技術研究は、知恵の創出やそれを担う人材の養成を通して、未来社会を構築するチャレンジと言えます。

研究者は、大きな課題(意義は大きいが難しい問題)に対しても尻込みをしてはならず、果敢に挑戦しなければなりません。それが専門分野であれば、他に克服できる人はいないためです。最も大きな課題である本丸を直接狙うのが筋ですが、状況に応じて櫓から攻めて、議論を少しずつでも前へ進めることが重要です。課題が極めて困難な場合、得られた知見を論文という形で後生の研究者にバトンタッチして、何世代にも渡るアプローチ(バトル?)になることも多々あります。

人の思考の自由度・可能性は無限と言ってもよく、難しい課題に対して革新的な方法を提案して、具現化していくのが工学研究の醍醐味です。

 

青葉山キャンパス秋

青葉山キャンパス

多彩な専門性(色)が集うと、パフォーマンスが上がります