幾何光学によるデバイス設計

 

 電磁波である光場の解析法は、解析モデルのサイズに基づく近似法により、波動光学(物理光学)と幾何光学に大別されます。いずれもマックスウェル方程式に基づくものですが、前者では光を波動として扱い、振幅とともに位相が考慮されて、干渉・回折現象も再現します。ただし、解析モデルが複雑であったり大きかったりすると、膨大な計算が必要になります。その一方で後者は、波長に比べて解析モデルのサイズが大きいと仮定して、位相がランダムになり干渉は生じない扱いとします。例えば、レーザー光はコヒーレント光であっても、長距離での位相干渉を考慮する必要はありません。なお、微小光学モデルを扱う場合、マックスウェル方程式をそのまま解く必要があり、そのような扱いを近接場光学と呼びます。無線通信分野における電波の扱いと同じ解法が必要となり、滞留する非放射光はエバネッセント光と呼ばれます。

後者の幾何光学では、様々な方向の光線(平行光)に対して透過・反射・屈折効果をスネルの法則やフレネル反射側で求めた後、それらの光線の振幅を足し合わせます。この近似に基づく幾何光学は、光線を追いかけて計算していくため、レイトレーシングとも呼ばれます。複雑な構造でも短時間で高精度に計算・設計が行える特徴があります。

本研究室では、液晶ディスプレイや光学デバイスの設計に活用しています。例えば、バックライト光源から多方面に放出された光(ランバーシアン配光)は、微小プリズムアレイを伴うプリズムシート(BEF板)の挿入により、正面方向に集光されます。それらの様子は以下のように解析され、プリズムシートの挿入により正面方向の輝度が高められることが確認できます。

 

光源配光

直交BEF通過の光線追跡表示

光源単体の配光分布

(ランバーシアンな面光源)

光源から多方向に放出される光線を仮定

 

 

BEFにより進行方向を変える平行光線

プリズムシートによる様々な光線の屈折

 

 

BEF配光

光源にプリズムシート(直交2枚)を

挿入した場合の配光分布