東北大学電気・通信・電子・情報同窓会 シニア座談会
テーマ 「日本の情報産業・通信産業を世界ナンバーワンにするためには、今何をすべきか」


開催内容

日 時: 平成26年12月5日(金)15時~16時
場 所: 八重洲ホール4階会議室
出席者: 大槻幹雄、小野寺正、金井浩、野口正一
テーマ: 「日本の情報産業・通信産業を世界ナンバーワンにするためには、今何をすべきか」

主催・共催・後援
共催:東北大学電気・通信・電子・情報同窓会 本部、東京支部

東北大学電気系同窓会フェイスブック

内容

座談模様(写真はクリックすると拡大します)
 
   野口   「日本の情報産業・通信産業を世界ナンバーワンにするためには、今何を すべきか」と題して、産学の経験豊富な方々との間でディスカッションをしたい。はじめになぜ日本の電子産業がなぜ衰退したのか、モノづくりの観点から大槻氏におうかがいしたい。

   大槻 そもそもなぜジャパンアズナンバー1になれたのか。そこからなぜ凋落したのだろうか。日本は昔から遣隋使、遣唐使、あるいは明治維新でも諸外国の仕組みや技術を学んで取り入れる、そういう形で新しい時代を築いてきた。戦後も何もないところから作りだしていく、いわゆるプロダクトアウトは得意であった。今のマーケットイン的な発想で考える市場になり、何を求めているのかに応 えていく時代になった。目指すべきゴールが見えていてそのゴールに向かって追 いつけ、追い越せは得意であった。そういう環境で発展をとげてきた。特に品質 を重要視して進めたことが国際競争力になっていた。モノづくりの観点でいうと、すりあわせ型と組み合わせ型と2種類あって、日本の得意な形は摺合せ型、 きめこまいところをうまく調整して作り上げていくのが得意。組み合わせ型というのは、今の情報処理だと、プロセッサ、キーボードがすでにあって組み合わせれば簡単に作れる。従って、此れまでの強みが活かせなくなっている。自分で 「あるべき姿」を決めて、産官学、力を合わせて同じ方向に向かっていく、そこが得ではないと思う。

パラダイムシフトがおきていることに対する変化への対応が遅い。半導体の例でいえば、例えばメモリ製造単品の技術では過去にナンバー ワンになったが、その後コストダウンし、その後SOC(System On a Chip)のような時代になると、総合的な技術で作り上げるようになってきた。メモリだけだと単に小さな領域にいかにたくさん詰め込むか高集積化に向けて繊細さを極めていけばよかった。がSOCだと総合的に作り上げていかねばならなかったが、総合的技術が不得意だったのではないか。それから科学・研究開発の面での対応が不十分であった。全体的に世の中の動きへの対応がスピード不足だったのではないか。

   野口 富士通で製造業を経験されてきた経験からの振り返り、ありがとうございます。次にKDDIからみた日本の製造業の凋落をどうとらえているのか小野寺氏に おうかがいしたい。

   小野寺 情報機器分野で言えば、日本だけではなく欧米の老舗メーカーもみんな没落している。ルーセントが今はアルカテルに買収されている。モトローラもノキアに買収された。グローバルにみると、古いタイプのメーカーはどこの国もいっしょで生き残れなかった。問題は、新陳代謝が起きているかどうか。米国では、HPやシスコといった新たな企業が台頭している。企業の新陳代謝が図られた。この新陳代謝があるかないかが国際競争力を決定する大事な要因である。必ずしも日本のメーカーだけが落ち込んだわけではない、とみている。

先ほどおっしゃっていたプロダクトアウトとマーケットインの話はメーカーだけの話ではなく、キャリアも同じ。NTT独占時代はまさしくプロダクトアウト。KDDI設立後海外キャリアと会って話をすると、「マーケティングの責任者は誰か」とよくきかれた。営業組織はあったが、マーケティング部門がなかった。マーケティングという考え方が弱かった。メーカーに限らず、キャリアもいっしょ。すりあわせ型、組み合わせ型、アナログとディジタルと同じだと思っている。

よく言われるのは、ウォークマンで勝って、なんでiPodで負けたか。その理由はiTunesだ、という人がいるけれども、iPodが出た時はiTunesはなかった。それでもiPodは売れた。それが事実。ウォークマンは、アナログ部品とメカで構成されている。iPodはメカは不要。メカは日本が得意、世界には負けない。アナログ技術も調整部分が必ずあって、日本の得意分野であった。ところが、オールディジタルだとそんな技術はいらない。よせあつめの部品でモノが作れる。iPod出始めのときは部品のほとんどが日本製。同じように作っても日本のメーカーが作ったのは使いにくかった。ソフトウェアの差。

経団連でよく言うが、モノづくりというとハードウェアの話をいうが、製品、商品となるとソフトウェアが大事なのだが、それを3K産業にしてきた責任は企業側にもある。コストの面が重視されたからというのもあるが、ソフトウェアの重要性を知っているはずなのに軽視してきたのが問題なのではないかと思っている。

そこに気づいている企業もあって、一番有名なのはコマツのコムトラックス。GPSを使って遠隔で建機管理をするサービス。コムトラックスのソフトウェア開発は当初は外注していたが、サービスの心臓部だということもあって内製に変えた経緯がある。ただし残念ながらGPS衛星はロシアのグロナスを使っており、それがわかる技術者はロシアにしかいないということでロシアに開発拠点を作った。これを内製というのかは意見があると思うが、会社としてソフトウェアが心臓部であって内製する、と決めたというのは重要な事実。その結果、コマツは屋外に置かれた建機類の管理ビジネスという領域で圧倒的に強くなった。

もうひとつはアイリスオーヤマの例。社内システムは内製化している。なぜ内製しているのか、というと、これが経営スピードに直結するからとのこと。外注すれば要件定義して発注するだけでもだまって3か月はかかる。社内なら3週間。そのスピードで勝つと言っている。

この2つの事例をきくと、ICTに関わっていて本来強みにすべきはずの我々の業界が一番競争力を低下させたのではないかという気がする。また、メーカーのサービス会社化が進んでいる。ハードウェアを売ってもうけるビジネスモデルから、ハードウェアと合わせてサービスを提供することでランニングをいただく、そういうビジネスモデルにどんどん変わっている。エリクソンしかり、ノキアしかり。エリクソンでいうと、通信機器で3分の1の売り上げ、サービスで3分の1、その他が3分の1の構成で、利益率はサービス分野が圧倒的に高い。サービスと言っているのは具体的にはオペレーション&メンテナンス。先進国のキャリアはやっていないが、発展途上国においては、フルターンキーどころか、オペレーションもメンテナンスも全部やっている。かれらは物売りの利益よりもオペレーション&メンテナンスの利益が大きい、しかもランニングではいってくる。ビジネスモデルがメーカーであっても、変わってきている。

有名な話だが、エレベーター。その次に有名な話がプリンター。エレベーターは、はっきりいってゼネコンに買いたたかれるが、あれは法定点検が義務付けられているので、そこでもうける仕組みにしている。日立製のエレベーターには、無線センサーをつけてセンターで全部みられるようにしている。そういう仕組みでもうけている。プリンター、複合機もおなじ。ハードウェアで儲けるのではなく、トナーといった消耗品の持続提供でもうかる仕組み。ものを売ってもうける仕組みが多くの分野で変わってきている。が、残念ながら日本のメーカーはそこに乗り遅れたところが多い。そこが問題ではないか。

   野口  エンドユーザが所有するデバイスだけのビジネスは難しくなっており、 トータルシステムインテグレーションでかせぐ時代になってきている。あとでま た議論したいが、社会インフラの構築が日本の産業界の大きなテーマだと思って いる。話はかわって、金井先生、学術界からはどうみえているのか。

   金井 今年、東北大学でトップリーダーの特別講義を実施して、いろいろな有名な先生にきていて話をいただいた。先ほど大槻さんから話があったとおり、日本は海外から技術を取り入れてやってきており、本当の新しい概念が日本からは生まれていないのではないか、との指摘を受けた。本当の新しい概念を日本から出すためにグローバル化をして海外と仲よくしながら情報を得て行く必要があると感じている。あと心配なのは、昔の旧制高校が優れていた。1920年くらいに生まれ、戦争のとき20代の方々が戦後の復興を支えてきた方々、その方々に直接指導を受けてきた1950年代の方々までは良かったのだけども、旧制高校はもうなくなっている。あれはGHQが戦争中に活躍した方々をみて怖くなって旧制高校をつぶしたという話もある。旧制高校のようなエリートを養成する教育システムを失ったことが大きなマイナスだったのではないか。

また、企業も分割が進み、自社内や自部門の中はよく知っているが、隣までみえなくなっているのではないか。ものをつくるには、ハードもサービスも全体を見る必要があるのに、そういうことがやりにくくなっているのではないかと思うし、大学もそういう教育をしていないのではないかと思う。もっと心配なのは、日本の大学は専門を教えているのは3年のときだけ。2年の後期を入れても1.5年間。昔はそれで世界と戦える専門を教えていたが、今の時代にそれで世界と戦える専門を教えているかが心配。4年生になるとほとんど卒論で時間を費やす。1,2年は一般教養。これはいろいろな歴史があって旧制高校を廃止したときに今の形になったのだが、これからも1.5年間で専門を教えられるのかが心配。

電気は電気、機械は機械、それを教えて電気の頭、機械の頭にすることはもちろんできるのかもしれないが、たぶんこれからは全体を見えないといけない。電気の学生は機械のこともある程度知らないといけないし、化学のこともある程度知らなくてはいけない。材料、土木、建築も同じ。ある程度知らないといけない。それぞれのところの基盤科目くらいはある程度知らないといけない。そこまで全然手がついていないが実態。大学側の反省。

また、東北大だと生物を高校で選択しない学生でも入学できる。中学レベルの生物しかやってこない学生がほとんど。そういう学生に生物のことを教えないといけないし、それからモノづくりでいうとデザインのことも教えたいし、いろいろなことを教えなければいけないが対応できていない。MITは生物を全員に教えているのに日本はまったくやっていない。それはいろいろな面で反省があるし、そうしたいと思っても今となっては専門教育に1.5年間しか費やせないところに入れるわけにはいかない。

学生も4年生のときは忙しくないのに、単位が取れているからといって履修しない。大学院に進むと研究中心。野口先生の方がよくご存じですが、ソフトウェアを軽視した結果も、例えばOSなどは日本からはほとんど出てきていない。新しいものしか目指さないところに日本の大学の課題があるかもしれない。

  野口 ソフトウェアが軽視されてきたのは、価値観が企業になかったこと。それが最大の問題。コンピュータを作って売るときに当然ソフトウェアがなければ動かないのに、ソフトウェアはおまけだということが企業にも買う側にもあった。そういうフィールドを醸成してしまった。

   金井 ほんとはUNIXに変わるものを失敗してもいいから日本の大学でもどんどん作ればよかったが、その動きがほとんどない。

   野口 大学の先生の問題もある。ソフトウェアに対して価値観を見いだせなかった。一つは論文を書けなかった。ほんとは書けるのだけども、それに対して評価をする者がいなかった。具合が悪かった。

   金井 本当は尖ったものがあるのだろうけども、周りが極めて薄い。正規分布になっていて、淘汰されるものが沢山あるけど、いいものも残っていくのだと良いのだがそういったことが許されない土壌であった。

   小野寺 日本人はどの時代からかわからないが見えるものには価値を認めるが、見えないものに対する価値をなかなか認めない社会。それが大学もメーカーもユーザも箱にはお金を出すがソフトウェアにはお金を出さない。


   大槻 現役時代、キャリアとおつきあいしていたときに、ソフトウェアの比率が増えてきていたがお金を出してくれない。ハードにしかお金をださない。これで困った覚えがある。ソフトは工数がどんどんかかっているのにお金がもらえない。大学はどちらかというといハードウェアの研究が多いと思う。

   金井 特に東北大学はその傾向が強い。材料科学ですから


  大槻 東大のトロンは出たが、それを発展するする力が日本にはなかった。それと、これからのマーケティングの重要性を考えると、文化的要素、社会的要素、経済的要素、技術の4つの条件を考えて取り組んでいけないといけない。ドクターを企業で採用してもとても領域が狭いので使いにくい。旧制高校の話があったがリベラルアーツをしっかり勉強した中から尖ったものが出てくる。国家の品格の藤原さんが書いているように、一般教育を養った上で尖ったことが出てくるのだと思う。どこの企業もそうだと思うが、ドクターを採用しても企業で再教育しないといけないのが実情。ポスドクもいっぱいいるのであの人材をどうにかして活用できるようにすべきでは。

   野口 産業界でもいろいろなドメインでニーズがあると見えているが、ドクターコースのカリキュラムとのマッチングができていないようにみえる。研究はしているし論文もかけている。学術界からの要請に応えることはもちろん大事だがそれだけではダメ。産業界とリエゾンができるようなものにならないと。最大のハードルは先生。教えられる先生がいるのだろうか。

   金井 MITは4年間リベラルアーツに時間をかける。修士も座学が中心。日本のように修士論文を仕上げるのが中心ではない。リベラルアーツ、数学、物理の基本をやってから工学に入る。日本人も勉強しているがやっている量も専門性の深さも違う。

   野口 グローバル化したとき日本人が外国人とおつきあいしているときに、技術の分野では意見交換できるかもしれないが、真に会話をするにはお互いに相手の文化を知り合うことが大事。日本人は日本の文化をきちんと外国人に話せるか。それができないと相手にされないのでは、と心配している。こういう教育が必要。

   小野寺 英会話はある程度できればいい。それよりもむしろそれ以外の知識が重要。駐在した方々にきくと、それなりのクラスの人に付き合うには日本の文化を知らないととてもじゃないがつきあえない。


   大槻 CCITTの国際会議に何度も出ているが、会議のテーブル上でものごとが決まるわけではなく、ほとんどはアングラで決まる。アングラのところでいろいろな会話をした中で、信頼関係ができてデファクト化していくことが大事だが、日本人はできていない。

   野口 人間関係をきちんと作る。国際化でもっとも大事なのは人間関係構築ができる人材を育てること。それが重要なテーマ。

   大槻  技術屋が標準化の会合に出ているが、日本人はものの見方が狭い。もう少し技術外交ができるような視野の広さが求められていた。

   野口 かつて日本の浮世絵が絵の世界で席巻した時代がある。能にしても歌舞伎にしても彼らと対等に話せるものがある。相互理解できる可能性はある。彼ら、一般教養はとても高い。技術者だってピアノ弾けるのがいたり、きちんとした唄を歌えたりする者もいる。そういう人と対等につきあっていかないといけない。

大槻 スタンフォード大学のピアノが上手い経営学の先生の講演をきいたことがあり、これからはジャミング経営だと。テーブルに着く前に、みんなでワイワイやった結果、じゃあそれをテーマにとりあげよう、とテーブルにのせる、それが大事だとピアノを弾きながら説明していた。ピアノも弾き、経営学も語れる様な人材を作っていかないといけない。旧制高校にはそういう雰囲気があった。寮生活で文化系も理解系も関係なく一つ屋根の下で暮らす。あれがよかった。

金井  東北大学でも寮を復活させようと考えている。全寮制も。なかなか反対もあって進めない。京都大学でもトライアルやっているがまだ40人程度。

野口 最初はそれでもいい。エリートを作れ、という意味でそれはいい。東北大学もほんとのエリートを作る仕掛けをつくるべきでは。

金井 全体底上げと上を更に伸ばすことが重要。工学部では、成績上位者だけで英語の合宿しようとかやり始めている。

小野寺 大学教育もずいぶんと変わってきた。社会人ドクターもずいぶんと減っている。産学の人事交流数は文科省のデータをみるとかなり減ってきている。大学側が制度を変えて自由度を持たせている、これに対応できる企業側の制度が整備されていない。根本は、年功序列、一企業で最初から最後まで雇用される、という前提での制度は変わっていない。

野口  高度成長期はそれでよかった。

小野寺 そのとおり。企業からの人材派遣がやりにくくなっている。大学側の受け入れのほうが自由度がある。



大槻 企業側の人事部門が硬直化している。これから何をやりたいかを決めて、それに必要な人材は何か、そういう発想ではなく、年齢できってリストラする。これは一番簡単な方法。サボっている。組織作りの工夫、部門細分化によりトータルで見られる仕組み作りが大事。

小野寺 現役の人事についても、できる社員にいろいろと経験をさせたいと思っても、上司が出さない。いい社員は抱える。社長や会長が見られるのは物理的に本部長以上だけ。その層はやれるがその下となると現実は難しい。


大槻 その下の層と同じ意識、ビジョンの共有がないとうまくいかない。


金井 ビジョンを持って、将来の会社を背負う人材を育成するのだという決意をもってやらないといけないのだろう。

野口 これも教育の問題。企業内教育。経団連が牽引してやれないのか。
小野寺 経団連も動いているが、昔の高度成長期であれば企業間の意見統一も可能であったが、今は意見がバラバラで動けない。経団連として提言を書いているが、意見を集めることはできるが、プライオリティをつけるとか意見を削るとかができず総論的な話にならざるをえない。

大槻 モノづくり白書をみても分析はやるが、どうするかの見解がない。一方米国では、戦略的イノベーション分野はここだ、と明確にしている。5分野ここだ、とはっきりと言っている。日本の国家プロジェクトにはいくつか参画した。10年計画でやる、と決まるとまわりがどう変わっても10年間やる。そして役に立たない。変化に対応すべき。

野口 これまでのリアルな世界と違って、インターネットにより膨大な世界ができたことに対してどうビジネス対応をするのか、それが課題。

小野寺  日本のイノベーションは大企業が牽引するのではないのかもしれない。リスクが気になり手を出しにくい。米国は判例主義。考え方のベースが違う。法律に明記してないならやってみよう。日本と欧州は法律に書いてあることはやってみよう。米国も大企業は日本と変わらないが、ベンチャーはやってみようの文化。大学としてのベンチャー起業を東北大は伝統として持っている。米国との大きな違いのもう一つ、技術、エンジニアリングに対する評価が低いこと。CTOがCEOより報酬が多い例が米国ではよくある。

野口  時間もなくなってきたので、日本の情報通信産業復活のシナリオを。

大槻  此れからはオープンイノベーションがキーワード。商品開発を進める企業と基礎研究を担う大学をはじめとした公的機関の連携が重要。新しい技術とマーケットを結びつける仕組みも必要。また、少子高齢化時代に向け課題解決型の先進国としてどう乗り越えていくか。ICT第三次革命への取り組み推進や学際、業際への取り組み推進等が重要。最後に言いたいことは、2020年オリンピックに向けて一つでも新しい取り組みでのイノベーションを形にしたいものだ。

小野寺 インターネットで情報の入手・発信が公平に手軽にできる時代になった。社会制度含め今までの仕組みを変えていく時代にきているのではないか。企業も同じ。誰もが必要な情報を得ることができる情報のフラット化が進んでいる中、組織のピラミッド構造を変える時期ではないか。若い人たちにはチャンスの時代。集団の強みに加え、個人の強みが重要視される時代になっていく。そして個人が他人とどうコミュニケーションが取れているのか、企業の中よりも企業の外との付き合いが多くなっていくのではないかと思う。

金井 大学のグローバル化と言われ、「グローバル化」が目的のような言われ方をしているが、それは手段で、目標ではない。日本は少子高齢化の課題先進国だから、大学も基礎研究ももちろん重要だが、外から取り組みが理解されるような取り組みをすべき。ベンチャー起業も毎年1%ずつでも増えれば30年後には米国並みになる。長期の戦略も持たないといけない。そういう点でいくと日本の大学は研究面でも社会貢献面でも戦略性をもった取り組みが重要。「東北大学がないと困るな」と社会から言われるようにならないといけない。教育の面でも専門性を深めるのももちろん重要だが、広い視野を持たなければといけない。日本を支え世界で活躍しようという人材を育てていかねばならない。

野口 時間になったのでまとめると、今日は日本のICT産業の本質的な課題についてお話をうかがった。次回はこれらの課題を解決するための具体的な産業戦略についてお話をうかがうことにしたい。ありがとうございました。

-以上-


戻る