東北大学電気系同窓会東京支部
第10回企業間ネットワーク交流会 
2001年 6月12日 ゆうぽうと (五反田)



■ 第一部
 
 丸山紘一東京支部長の開会の挨拶に引き続き、宇津木さんの講演を頂いた。
講演者の宇津木氏は、全日本女子ソフトボール監督として、シドニーオリンピックで銀メダルを獲得された。その際の練習について紹介して頂いた。

講演概要

「練習は裏切らない」

  全日本女子ソフトボール監督  宇津木 妙子さん

 
 シドニーオリンピックが終わって,スポーツで勝つことによって自分の生活がこんなにも変わるものかと痛切に感じています。特に行きの便はエコノミーでしたが,帰りはファーストクラスで帰ってきたのですから。スポーツの世界の天と地はこんなにも違うのかなと。

 3年前に全日本の監督に就任し,まずはシドニーオリンピック出場権を手にするために世界選手権で5位入賞することを目標にチーム作りをしました。世界選手権で3位入賞してからの2年間は”金を取ろう”を合言葉にしてチーム作りをしてきました。勝つためにはどうしたらよいか,他のチームと同じようにやっていたのではだめですが,でも練習しかない。ただ練習するのではなくて,何のためにこの練習をやっているかを意識させながら練習させました。また,最高の目的設定をしました(シドニーで金を取るという)。それと同時に監督の方針すなわちこういうチームを作りたいということを選手一人一人に分からせました。さらに各選手の分析をして行きました。全日本の選手ともなれば選手の個性も強く,様々なことがありましたが,最終的には15人の選手の心を一つにすることができました。私を含め選手たちは,代表としての自覚と責任,それとソフトボールをメジャーにしたい,評価して欲しいという思いがありましたから,何をやってもついてきました。特に世界選手権が終わってから2週間の台湾合宿で,本当にハードな練習をしました。アメリカでの合宿はどこの国へいっても平常心で試合をできるようになるためのトレーニングを兼ねて練習しました。オーストラリアでの合宿では小さな試合でしたが初めて優勝したのです。台湾での厳しい練習の成果が自分たちの力になっているんだということが分かり,チームが成長していきました。最後3ヶ月は相手のチームをイメージしながら、練習をしてきました。アトランタの時の選手はおどおどとしていましたが,シドニーオリンピックの開会式ではソフトの選手は一番堂々としていました。それを見てこの子達はやってくれるんじゃないかなと思いました。リーグ戦7戦全勝でいい形で行けました。それまですべて私が先発も決めオーダも全て一人で決めてきたのですが,最後の決勝戦だけは迷いがありそれが一因となって決勝戦は負けてしまいました。レフトの選手がエラーをしてさよなら負けでした。試合後ロッカールームで着替えをしていると,エラーをした子がトイレで泣いていて出てこないのです。私は”いつまでも泣いてるな,おまえのエラーで負けたんだろ!”と大きな声で怒鳴ってしまったのです。そしたら,”彼女のエラーで負けたんじゃない,みんなで負けたんだです。このチームはなにをやるにもみんなでやろう。苦しいときもみんなで,楽しいときもみんなで,勝ったときはみんなで勝つんだ。まけたときはみんなでまけるんだって監督はいってきたじゃないですか”と別の子に言われて,もうその一言を聞いて私はつらいという気持ちと,有難う気持ちでいっぱいでした。本当に良いチームを作ってしまったと感じました。でも良いチームではなくて本当は強いチームをつくらなければいけないという反省もありました。

 ここまで心を一つにできる良いチームを作れたのは,選手とのコミュニケーションを大切にしたからだと思います。監督は何を考えてあなたのためにこういうことをやっているかを常に選手と話してきました。練習前,練習中,練習後,常にコミュニケーションを取ってきました。内容もソフトボールの話,監督の考え方,ソフトボール以外の話など様々でした。こうやってコミュニケーションできていたから,お互いの気持ちの把握や意思の疎通がしっかりできるようになったのです。全日本では,挨拶をしなさい,人に迷惑をかけたらダメだ,食事はきちっと食べなさい,練習中私語は許さないととにかく厳しくしました。もし守れないようであれば,その場で止めさせる。怒鳴ったり殴ったりもしました。選手にとってはかなりプレッシャーだったと思います。でもやりがいもあったと思います。それは,叱っても何が悪かったかのかを常に選手に伝えていたからです。ホントにいろいろ厳しいことをやりました。でも厳しくして選手たちはやめないのです。お互いに信頼しあっているからです。この子はなんとかしたいなとおもったら,徹底的に怒ります。上に立つものは熱意を持ってこれぐらいのリーダシップを取らなければいけないんだと思います。仕事でも何でも徹底的にやる。部下を可愛がる。部下に自分の考えがわかってもらえるように努力する。そうでなければ,部下は絶対ついて来ないと思います。

 幹事の和田さんからこの話を頂いたとき,今はまだ若いがいずれはリーダになるような人を対象として話してくれと言われて,どんな話をしたら良いか悩みました。上の人は本当に凄い仕事をしていると思います。上と下の間に入っている皆さんのような中堅が,上の人の考え方をもっともっとしっかり分かって,末端にまでその考え方を行き渡らせる必要があると思います。何のためにこれをやっているのかということを。

 昨今のメールの普及で,私の会社でも隣に座っている人とでもメールでやり取りしているのです。あんなの意味ないなと思います。やっぱりお互いが顔を合わせて仕事の内容を話しながらやって初めてうまくいくと思うのです。それがだんだんなくなって,自分の与えられた仕事だけやっていればいいやとなっていくので,やりにくくなるのだと思います。だから私は集団として何かをやろうという意識付けが重要なのではないでしょうかと強く思います。それにはとにかくコミュニケーションが大切なのです。
みなさん、部下に自分がどれくらい慕われるか,アンケートを取ってみたら面白いと思います。面白い結果が出ると思います。でもそれを恐れたらだめだと思います。絶対自分を持って仕事をやった方が良いと思います。それぐらい自分に自身を持てるようになって仕事やったほうが良いと思います。また部下一人一人にやる気を持たせられるリーダにならなきゃだめじゃないかなと思います。部下一人一人を本当に理解する,それくらいにならなかったらだめだと思います。

 これから,全日本チームと日立チームと両立してやっていかなければならない苦しさはあるのですが,すごくやりがいがあります。その中でなにしろ自分自身がやる気になってやらなかったら,選手は絶対ついてきません。そういうわけで私は常に気を入れて打ち込んでいます。今度は強いチームを作って,アテネで優勝したいと思います。

 最後になりましたが,たいした話はしていないのですが,もし皆さんが悩むことがあれば,高崎工場まで私たちの練習を見に来て下さい。若い選手達が真っ黒になってボールを一生懸命に追っている姿を見たら,やる気が湧いてくるんじゃないでしょうか。とにかく頑張っておりますので,応援よろしくお願いいたします。拝聴して頂きありがとうございました。


 


■ 第二部

 今回、同窓会会長の西澤先生にも出席いただき、小人数ながらも若手、中堅の同窓生との親睦を深め、有意義なひとときとなった。


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